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2023年の大雨災害を経て、上田左官工業が目指す未来図

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2023年6月30日~7月1日にかけての大雨災害で総額2000万円の被害を受けた同社。災害復興を経て考える未来や今後の展望について、上田伸也社長に話を聞きました。

 

--大雨災害では甚大な被害を受けたそうですね。

 

はい。事務所内は約50センチの床上浸水で、書類や大切なデータの入ったパソコンは水没。車両も、1年前に新車で購入したものも含めて5台が全て水没し廃車になりました。また、バックフォーなどの重機も電気系統が壊れて修理に多額の費用がかかり、保管していた材料60~70万円分を失いました。

 

私は4年前に独立し、当社は2021年2月に創立しましたが、これまでにない大きなショックを受けた出来事でした。とてもありがたいことに、業績も伸びてきてスタッフも増え、順調に発展していると思っていた矢先だったので、頭が真っ白になりました。手狭になってきたので倉庫を新しく建てようとも思っていましたが、計画も一旦中止にしました。

 

--お気持ちは計り知れません。どの様にして立ち直られたのでしょうか。

 

被災した直後から、とにかく前を向くしかないと思いました。夜中の災害でしたから、人命に被害がなかったことが一番でした。翌日、お取引先の方々からたくさん連絡をいただき、仲間は復旧の手伝いに駆けつけてくれ、周りに励まされたことも原動力になりました。

 

「従業員のみんなも無事だし、買えるものはまたこれから頑張って買えばいい」。そう考えると、災害は仕方がないと割り切ることができました。

 

今回の災害は、私にとって大きなターニングポイントになったと感じています。災害に見舞われたからこそ出会えた人もいました。これから何があっても動じないだろうと思うほど、メンタルは強くなりましたね。3カ月経った今も、復旧しながら営業している状況ですが、落ち着いたら水害の可能性が低い高台へ移転したいと検討しています。

 

--上田社長のお人柄が伝わります。現在、創業から2年半が経ちましたが、仕事へのこだわりも強くお持ちだと聞きました。

 

はい。最も大切にしているのは「品質と仕上がり」です。お客様がイメージしている仕上がりにどれだけ近づけられるかを意識しています。そのためには、妥協はしません。イメージの共有と提案のために、ときには50枚近くのサンプルを作ったりもします。

 

17歳のときに左官職人として働き始めてから約20年のキャリアになりますが、イメージ通りに美しく仕上げられたときには、今でも達成感と仕事の楽しさを感じます。「手を抜かない、適当な仕事をしないこと」が私のモットーです。既製品の材料を塗るだけではなく、職人の腕の見せ所として、オリジナリティのあるものを提供したいですね。

 

--後進の育成にも注力を始められたそうですね。

 

現在、私自身も現場で作業をしながら、2人の従業員を育成しています。左官のおもしろさを知ってもらい、腕の良い職人になってもらえるようにと日々教育をしています。

 

左官業も時代の流れに応じて変化をしています。新しい材料がどんどん海外から入ってきたり、新しい仕上げ方法が出てきたりと、職人として新たな仕上げも日進月歩のごとく、考えていかないといけません。流れや業界のトレンドにも付いていける職人を育てたいですね。

 

左官は家の外構や室内に施すもので、空間や場の演出をする仕事でもあります。新しい仕事にもおもしろさを感じながら、未来を担う職人と一緒に成長していきたいと思っています。

 

--今後の目標や展望を教えてください。

 

目標と同時に野望でもありますが、会社規模を大きくしたいと考えています。チームでないとできない仕事や今の規模感ではできない仕事もたくさんあります。職人も増やし、近い将来には「左官のことならできないことはない」というプロ集団の会社にしていきたいです。

 

また、一般の方にも「左官ってこんなこともできるんだ」ということを伝えるべく、塗り壁イベントや左官技術を応用した泥団子作りなど、親子へ向けたイベントにも挑戦し、今後は積極的に参加していきます。左官の仕事を多くの人に知ってもらいたいです。

 

やりたいことはたくさんありますが、まだまだ駆け出しの会社です。人にも仕事にも誠実に向き合い、信念を持って進んでいきたいと思います。

 

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インタビュー年月:2023年9月

インタビュアー:SK企画 札本咲子

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