その「安さ」は、誰の犠牲の上に成り立っているのか?
――「適正価格」という言葉に込めた、左官職人の矜持と覚悟
「お宅の見積もり、もう少し安くならないの?」
「他社はもっと安かったよ」
建設の現場に身を置く者として、こうしたお声をいただくことは一度や二度ではありません。一生に一度かもしれない大切なお買い物ですから、1円でも安く、賢く買い物をしたい。そのお気持ちは痛いほど分かります。しかし、私たちはその問いに対し、あえて背筋を伸ばし、こうお答えするようにしています。
「私共の提示した金額は、適正価格です。これ以上、削ることはできません」
なぜ、私たちがここまで「安売り」を拒むのか。冷たい響きに聞こえるかもしれません。しかし、その裏側には、お客様の資産を守り、日本の職人文化を次世代へ繋ぐための、譲れない理由があるのです。
●安さの代償は、数年後の「あなた」が支払うことになる
建設工事において、コストを大幅に下げる方法は実はシンプルです。
「材料の質を下げる」か「手間(時間)を省く」か、そのどちらかしかありません。
例えば、左官の仕事。下地を整える工程を一度省くだけで、見た目の完成度はさほど変わらずに、数万円のコストカットができるかもしれません。しかし、その数万円の「安さ」の代償は、3年後、5年後の壁に「ひび割れ」や「浮き」となって現れます。
目先の見積書を安くするために、私たちは嘘をつくことはできません。私たちが提示する価格には、10年後、20年後も「この壁で良かった」と思っていただくための、目に見えない「下地」の工程がすべて含まれています。見えない部分の手間を省くことは、建物の寿命を縮めること。つまり、目先の安さは将来の「莫大な補修費用」という形でお客様自身が後から支払うことになる、「リスクの先送り」に他ならないのです。
●職人の「手」を買い叩くことは、品質を放棄すること
「従業員がのびのびと働ける環境を守る」。これは経営者としての私の信念ですが、それは決して身内を甘やかしているわけではありません。
左官は、機械が作るものではなく、人間が手で作り上げるものです。
無理な低価格での受注は、必ず現場の賃金や安全対策を圧迫します。生活に不安を抱え、心に余裕を失った職人の手が、繊細で美しい仕上げを生み出せるでしょうか。お給料を削られ、誇りを奪われた職人が、果たして「最高の一仕事をしよう」というモチベーションを保てるでしょうか。
「安いですよ!」と口にすることは、現場で汗を流す職人たちの誇りを、そして彼らが提供する技術の価値を否定することに繋がります。職人のモチベーションは、そのまま仕上がりの精度に直結します。私たちが適正な対価をいただくのは、「最高の一仕事」をお客様に約束するための絶対条件なのです。
●「適正価格」は、社会と未来への信頼の証
いま、日本から左官職人が減り続けています。
安値競争に巻き込まれ、会社が倒れ、若者が希望を持てずに業界を去っていく。こうした悪循環が続けば、日本の美しい街並みや伝統技術を支える手はいずれ途絶えてしまうでしょう。
私たちが「適正価格」を貫くのは、この「左官」という業を一社でも、一人でも多く存続させるための挑戦でもあります。私たちが提示する「適正価格」には、以下のものが含まれています。
〇透明性のある積算: 国が定める公正な基準に基づいた、根拠のある価格提示
〇継承費: 次世代の技術者を育て、日本の左官文化を守り続けるための投資
〇経営基盤: 万が一の際にも逃げ出さず、責任を持ってアフターフォローし続けるための責任
この、国が求める公正な取引基準を守り、次世代の職人を育て、彼らが胸を張って家族を養える環境を作る。それこそが、建設業の仕組みを変えようとしている世の中の流れに対する、私たちの誠実さの証です。
●最後に
――私たちは「安心」を売っています
「安いにこしたことはない」。確かにその通りです。
しかし、その安さの裏側で、何がそぎ落とされているのかを、どうか少しだけ想像してみてください。
会社の利益を削り、職人を疲弊させ、将来のメンテナンスリスクを押し付けた上での「低価格」。それは本当に、お客様にとって「得」な買い物と言えるのでしょうか。
私共は、ぼったくっているわけではありません。かといって、安売りで責任を放棄することもしません。
「従業員が誇りを持って働き、お客様の大切な場所を、最高な品質で永く守り続ける」
そのために必要なコストを、正々堂々とご提示する。
それが、プロフェッショナルとして、そして一人の経営者として、私たちがお客様に対して果たすべき、最大の誠実さだと信じています。
「本物」を目指す同志へ
上田左官工業は、一生モノの「職人魂」を磨きたい仲間を募集しています。
今の自分を変えたい。そう思ったなら、まずはその一歩から。
共に「本物の世界」を創り上げましょう。