12月から「公益通報」のルールが変わります。改正公益通報者保護法とは?
2026年12月1日から、公益通報者保護法が改正されます。
突然ですが、こんな場面を想像してみてください。職場で「これはおかしい」と思うことがあった。上司に言っても動いてもらえない。そのまま黙っていたら、自分が損をするかもしれない。そんなとき、会社の外に声を上げることを「公益通報」といいます。
簡単に言うと、「会社の不正を、労働基準監督署や行政機関など外部に知らせること」です。そしてこの法律は、そうして声を上げた人が「余計なことを言った」と解雇されたり、不当な扱いを受けたりしないよう守るための仕組みです。
■「内部通報」と「公益通報」は、別物です
一方で「内部通報」は、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。会社の中の窓口や上司に「こういう問題がある」と伝えること。就業規則や社内規程に「相談窓口」として載っていることもあります。会社が自分で調査し、社内のルールにのっとって対処する、いわば「身内で解決する仕組み」です。
外に出るか、中で解決するか。この2つはまったく別の話です。今回の法改正で強化されるのは、「外に声を上げた人」を守る仕組みの方です。
■今回の法改正、会社にとって何が変わるのか
今回の改正で特に大きいのは2点です。
一つ目は「推定規定」の新設です。従業員が公益通報をした後、1年以内に解雇や懲戒処分があった場合、それは「公益通報を理由にした処分だ」と推定されます。会社側が「通報とは関係ない」と自ら証明しなければならない。証明できなければ不当解雇になります。
ただし、1年を超えたら安心かというと、そうではありません。1年超でも通報との関連が疑われる状況であれば問題になりえます。結局のところ、いつであっても日頃からの記録と公平な対応が、会社を守る唯一の手段です。
二つ目は刑事罰の新設です。公益通報を理由とした解雇・懲戒に対して、担当者個人に6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金、法人には3,000万円以下の罰金が科される可能性があります。これまでは「ルール違反」で済んでいたものが、「犯罪」になりうるということです。
-会社にとっては管理が厳しくなる。
従業員にとっては、通報したことで不当に扱われにくくなる。
ただ、それで本当にお互いにとって良い結果になるかは、正直難しいところです。
■現実はそう単純ではない
仮に不当解雇が認められたとして、元の職場に戻ったとして、お互いにとって本当に良い環境になるのかは疑問が残ります。刑事罰という抑止力は強化されましたが、それが実際に認められるケースがどれだけあるのか、まだ誰にもわかりません。制度が整っても、現実の職場がそれでうまく回るかは別の話です。
■私たちが取り組んでいること
この法改正は、常時使用する労働者が300人以下の中小企業については努力義務とされています。ぶっちゃけ、私たちはその努力義務の対象です。
法改正というと「従業員を守るもの」というイメージがあります。それは間違いではありません。でも経営側から見ると、正直なところ「会社にとって本当に良いものなのか」と疑問が残る部分もあります。
ただ、こうも思っています。もし権利を主張される場面が来たとき、何も備えていない会社と、きちんと規程を整えて記録を残してきた会社とでは、対応できることがまったく違う。法改正は、そのための動きを変えるきっかけになりえます。義務かどうかに関係なく、備えておくことは損にはなりません。
私たちのような小さな会社にとっては、正直「直接関係する場面は少ない」というのが本音です。ただ、法改正を機に社内規程を整備したことで、万が一のときに会社も従業員も守れる状態にはなりました。
●相談しやすい窓口の整備 メールや面談に加え、書面での相談も受け付けられるよう、社内での受け取り方法を規程に明記しました
●通報者を探す行為の禁止 「誰が言ったか」を探すことを社内で明確に禁止しました
●評価・指導記録の明文化 日頃の勤怠・安全管理・道具の扱いなどに関する評価基準と記録を整えました
いざというとき、公平な対応をしてきたことを証明できる状態にしておくことが、会社と従業員の双方を守ります。
■小さな会社だからこそ、記録と信頼が大切
私たちのような少人数の会社では、社長も事務方も職人も、毎日顔を合わせて働いています。大企業のように専門部署を設けることは難しい。でもだからこそ、日頃からの信頼関係と、きちんとした記録の積み重ねが会社を守ります。
「何かあれば言える」という空気と、「言ったことで損をしない」という安心感。この両方があってこそ、健全な職場になると思っています。法改正はそのための仕組みを整えるきっかけになりました。私たちも、まだ整えている途中です。
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