美容師さんに教わった、技術より先に「教わり方」を教える技術。
先日、わたしが美容院で髪を乾かしてもらっている時のことです。鏡越しに、ふとした疑問をぶつけてみました。
「もし新しく従業員を雇ったら、まず何を教えますか?」
職人の世界ですから、てっきり「ハサミの持ち方」や「カットの基礎」といった技術(ハード面)から入るものだと思っていました。しかし、返ってきた答えは意外なものでした。
「アドバイスはするけど、私が教えたいのは、考え方(ソフト面)だけです」
この言葉に、ハッとさせられました。
理由を聞くと、技術にはその人の指の長さやクセがあり、本人が「学びたい」と自ら動かない限り、無理に教えても身につかないと言うのです。その代わり、プロとして、一人の人間としてどういう思考で鏡の前に立つべきか。その「ソフト面」だけは、店長と同じ温度感で共有していたい、と。
これって、私たちの建設業界にもそのまま当てはまる、とても大切な本質ではないでしょうか。
●即戦力を急ぐあまり、私たちが忘れていたこと
実は、弊社の社長もかつて大きな失敗を経験しています。
「会社を大きくしたい」「若手を早く一人前にしてやりたい」と焦るあまり、即戦力を求めていきなり現場の技術(ハード面)を詰め込んでしまった時期がありました。
挨拶や片付け、段取りといった、人としての土台である「ソフト面」を後回しにしてしまった結果、若手との心の距離はどんどん開き、離職率も上がってしまったそうです。
社長は今、当時の自分を振り返ってこう言います。
「技術を教える前に、まずは親のような気持ちで、人として成長させなきゃいけなかった。ソフト面から向き合わなかったことが、一番の失敗だった」と。
この反省から、私たちは教育のあり方を変えました。
●「作業」を「仕事」に変える段取りの力
例えば今の現場では、「今日、どこまで終わらせるか」という目標を若手と一緒に決め、そのための段取りを組むことを何より大事にしています。
ただ言われた通りに体を動かすのは「作業」です。でも、自分で1日のゴールを設定し、どう動けば効率的かを考え、それを達成した時に仲間と「よし、やりきったな!」と喜びを分かち合う。これは「仕事」です。
ダラダラと時間を切り売りするのではなく、自ら時間をコントロールする楽しさを知る。この「ソフト面(思考)」が育つと、不思議なことに若手は自分から「あのアニキの技術を盗みたい」「もっと上手くなりたい」と、勝手にハード面を磨き始めるのです。
●下積みの再定義:稼げるプロになるための「OS」
正直な話をすれば、技術(ハード)が未熟なうちは、会社にとってどうしても「先行投資」の期間になります。技術が伴っていないのに高い給料を払うのは、経営の現実として簡単ではありません。
だからこそ、まずは「ソフト面」の徹底的な下積みが必要なんです。
挨拶、掃除、そして次の作業を予測して道具を揃える。これらは初日から100点満点を目指せることであり、これができる若手は、技術が未熟でも「現場に必要な人間」としてすぐに認められます。
今の時代の「下積み」とは、単なる雑用や我慢の時間ではありません。それは、「稼げるプロになるための、心のOSをインストールする期間」なのです。ここでソフト面を固めることが、結果として先輩から技術を最短で引き出し、自分の価値を上げていくための、一番賢い生存戦略になります。
●「仕事をおもしろがる」という才能
私が社会人になってからずっと念頭に置いているのは、「仕事が楽しくなければ、毎日がおもしろくない」ということです。
人生の大半は仕事の時間。なら、朝起きた時に「よし、今日もやるか!」と思える環境の方がいいに決まっています。
正直、私だって苦手なことばかりです。事務作業なんて建設業に入るまでやったこともなかったし、毎日が新しいことの連続で必死。前職の車屋さんは自分にとってこれ以上ない天職だと思っていました。でも、今は今で、この建設業界が「おもろすぎる」んです(笑)。
古くからの考え方が根付いている業界だからこそ、変えられる余地も、発見もたくさんある。
結局のところ、現場で一番強いのは「可愛がってもらえる人」です。自分を大切にし、仕事を楽しんでいる人には、周りは勝手に教えてくれます。他人に可愛がってもらうためには、まず自分自身を可愛がって、自分の仕事を好きになること。それが「教わり上手」への近道です。
●建設業界の未来を、私たちの会社から
「職人は見て覚えろ」という言葉を、ただの放置や教育放棄の言い訳にするのは、もう終わりにしましょう。
会社がすべきことは、手とり足とり答えを教えることではなく、「思わず盗みたくなるほど魅力的な背中を見せ、それを盗めるだけの豊かな心(ソフト)を授けること」。
まずは私たちの会社から、自ら考え、自ら稼げるプロが育つ文化を形にしていきたい。それが、建設業界全体を「最高におもろい場所」に変えていく第一歩になると信じています。
「本物」を目指す同志へ
上田左官工業は、一生モノの「職人魂」を磨きたい仲間を募集しています。
今の自分を変えたい。そう思ったなら、まずはその一歩から。
共に「本物の世界」を創り上げましょう。