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「仲良しこよし」が会社を壊す。経営者と労働者の間に必要な「壁」の正体

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最近、事務方として労働者の視点を持ちつつ、同時に経営の裏側も見ている私が、ずっと考えていたことがあります。

世の中では「フラットな組織」や「アットホームな職場」という言葉がもてはやされています。しかし、現場の最前線で経営と管理に向き合う中で、私が辿り着いた答えは、その真逆。

「経営者と労働者は、安易に分かり合おうとしちゃいけない」ということです。

一見すると冷たく聞こえるかもしれません。しかし、これこそが「経営」という役割に専念し、結果として従業員の生活を守り抜くための、経営者としての「一番の誠実さ」の本質なのだと考えています。

 
●「なめられる社長」が組織を壊す
 
小規模な会社ほど、社長が現場に出て、誰よりも動いてしまうことがありますよね。かつての私たちもそうでした。
しかし、ここには大きな落とし穴があります。社長が「最強の作業員」として現場に馴染んでしまうと、従業員は社長を「経営者」ではなく「仕事ができる先輩」と錯覚し始めます。

すると、社長が経営判断や営業のために現場を離れた際、彼らの目にはそれが「サボり」や「現場の放置」に映ってしまいます。
「自分たちだけが苦労している」という不満。それは、役割の境界線が曖昧になり、社長が「一人の作業員」としてなめられてしまった結果生じる悲劇です。会社が小さい段階だからこそ、社長は「経営者」という孤独な立ち位置を死守しなければなりません。
 
 
●「責任の質」が、埋まることのない壁を作る
 
私たちは、仕事というものを「機能」で二つに区分けして考える必要があります。
その機能というのは「経営者」と「労働者」。この二つは、そもそも仕事の定義が違います。

・労働者の役割: 現場の基礎を全うし、クオリティを維持し、工期を守ること。その「技術と時間」の対価として報酬を得る。

・経営者の役割: 表からは見えない場所で、資金を繰り、仕事を取り、会社を存続させること。全従業員の人生という「負債」を背負い、最後の一線で踏みとどまること。

この二つは、車の両輪のような協力関係ではありますが、背負っている「リスクの質」が決定的に違います。夜も眠れないほどの資金繰りの重圧を、現場の職人に背負わせるわけにはいきません。逆に、現場の細かな苦労のすべてを経営者が肩代わりすることも不可能です。

この「絶対的な立場の違い」を認めることが、お互いへの敬意の始まりだと思うのです。
 
 
● 「壁」があるからこそ、従業員を守れる
 
かといって、現場の苦労を知らず、仕事の基礎を無視する経営者がいいわけではありません。それではただの「冷徹な支配者」であり、組織の溝は深まるばかりです。

現場の解像度を高く持ちつつも、あえて「壁」を引く。それは、経営者が経営という本来の職務に専念するためです。
経営者が現場の顔色を伺い、「いい人」でいようとした瞬間、判断は鈍ります。時には現場が反対するような厳しい決断を下さなければならない時がある。その孤独な決断こそが、結果として会社を存続させ、従業員の雇用を守ることに繋がるのです。
 
 
●これからの「信頼」の形
 
もし、今も社長が現場と経営を兼任せざるを得ない状況にあるのなら、それは「職人」としてではなく、「次のステージへ行くための、戦略的な采配」としてそこにいます。

お互いの苦悩を100%理解し合うことは不可能です。でも、「あいつはあいつの役割を、命懸けで果たしている」というプロとしてのリスペクトがあれば、そこに感情的な「感謝」を強要しなくても、組織は健全に回っていきます。

私たちは友達ごっこをするために集まったのではありません。
それぞれの役割に誇りを持ち、くっきりとした境界線を引く。それこそが、プロとしてお互いの人生を豊かにするための、最も誠実な組織の形であると信じています。

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