元請けも下請けも、今は同じ船に乗っている
建設業の倒産件数が増えています。ニュースで見かけるたびに、どこか他人事のように感じてしまう。でも、数字をよく見ると「うちには関係ない」とは言えない現実が見えてきます。
■今、何が起きているのか
倒産しているのは主に、小規模な専門工事業者です。左官・塗装・内装・電気といった職種で長年働いてきた事業者が、ここ数年で一斉に限界を迎えています。
これは「下請けばかりが苦しい」という話ではありません。元請け側も、受注競争の激化と資材高騰で体力を削られています。立場に関係なく、業界全体が同じ嵐の中にいます。
■なぜこうなったのか
最大の原因は、コスト構造が急激に変わったことです。材料費・人件費・社会保険料、どれも上がっている。それなのに、請負金額がなかなか上がらない。
これまでは「自分たちが我慢すれば何とかなる」という方法で乗り越えてきました。でもその余裕は、もう底をついてきています。
―2023年、国(公正取引委員会)が初めて明確に認めました。
「下請けが値上げを言い出せない構造は、おかしい」と。
今はまさに、その転換期の真っ只中にいます。
■左官業が直面していること
左官は、機械に置き換えるのが最も難しい職種のひとつです。仕上げの質は、職人の手と経験に直結しています。だからこそ「安ければいい」という価格競争に巻き込まれると、技術が継承されなくなるという深刻なリスクがあります。
若手は減り、熟練職人は高齢化している。「施工できる」だけでなく、「工程を管理できる」「品質を保証できる」「コンプライアンスを守れる」という組織力が、これからの差になっていきます。
■パートナーを失うリスクを、経営の問題として考える
ここで少し視点を変えて考えてみたいことがあります。もし長年一緒にやってきた取引先が倒産してしまったら、どうなるか。
施工後に不具合が出ても、業者がすでに存在しなければ補修を求める先がありません。責任の所在が宙に浮いたまま、最終的には大きなコストとして跳ね返ってきます。
代わりの業者を探すことも、年々難しくなっています。高齢化と後継者不足で専門工事業者の数は減り続けており、長年現場で培ってきた信頼関係や技術は、新しい業者では簡単に補えません。
公共工事の世界では、こうしたリスクをすでに織り込んでいます。「安いだけの業者」より「経営基盤がしっかりしていて、長く安定して付き合える業者かどうか」が選定の重要な基準になっています。民間工事でも、同じ発想が求められる時代になってきました。
―取引先を守ることは、自分自身の現場を守ることでもある。
そう気づいたとき、価格の話し合いは「対立」ではなく「対話」になります。
■では、どうすればいいのか
どちらかが無理をして成り立つ関係は、長続きしません。元請けも下請けも、同じ現場を完成させるために動いているパートナーです。
大切なのは、正直に話し合えること。「この金額では続けられない」「こういう事情がある」と、お互いが言える関係。どちらが上とか下とかではなく、対等に相談できる雰囲気が、良い現場を作る土台になります。
適正な価格で仕事をして、お互いに利益が残る。それが結果として、良い職人を現場に残すことにつながります。価格転嫁は、わがままではありません。業界全体が健全に続くための、必要な対話です。
■倒産のニュースを、自分事として読む
「なぜこんなに厳しいのか」と嘆くより、「この変化の中で、自分たちは何を変えるか」を考える。それがスタートラインだと思っています。
件数をこなすより、価値を認めてもらえる仕事を選ぶ。売上より、利益が残る仕事の仕方に変えていく。それは立場に関係なく、業界に関わるすべての人に問われていることです。
私たちは建設業に関わる者として、この節目をただ眺めているつもりはありません。
お互いが対等に話し合い、歩み寄れる関係を、一つひとつの現場から作っていく。それが、私たちの考える「これからの建設業」の姿です。
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